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なぜ「和文左縦書き」が合理的なのか



1.「左縦書き」は字の筆順の向きと一致している




図3のように、日本語の漢字、ひらがな、カタカナは、基本的に左上から右下に向かう筆順で書かれます。
それは、右手で字を書くには自然な手の動きだと言えます。
しかし、現行の「右縦書き」は、左上から右下への各字の筆順とは反対向きの、右から左へ行送りしていることになります。
「左縦書き」は、字の筆順とは矛盾しない左から右へと行送りすることになるのです。


2.「左縦書き」は右手での手書きに適している




図4のように、原稿用紙などに右手で手書きした場合、現行の「右縦書き」では書いた行が右手の下に隠れてしまって、
見えにくくなり、また手をついて汚してしまうこともあり、「右縦書き」は右手で手書きするには不向きなのです。
右手で「左縦書き」によって手書きした場合は、書いた行がよく見えて、汚すこともなく、余白部分だけが、
右手の下になるので、右手で手書きするには適しています。


3.「左縦書き」は「左横書き」と矛盾しない




図5のように、今日では多くの新聞や雑誌の紙面では、本文は縦書き(右縦書き)で書かれ、
中見出しや、図版などの補足説明文が横書き(左横書き)で書かれて、同一紙面上で
「右縦書き」と「左横書き」が混在している場合が多い。
しかし、この紙面上では「右縦書き」の行送りと「左横書き」の字送りの向きが逆になるので、
煩雑な印象は否めない。




かりに図6のように、新聞や雑誌の紙面で縦書きの本文を「左縦書き」に置き換えた場合は、
縦書き(左縦書き)の行送りと、横書き(左横書き)の字送りが一律に左から右の向きに揃い、
その点では整然として読み易くなる。
また紙面のレイアウト作成者にとっても、縦書き、横書きの向きが揃っている方が作業しやすい。


4.ではなぜ「右縦書き」が慣習化して来たのか?


では、なぜ字の筆順の向きと矛盾し、右手で手書きしにくいはずの「右縦書き」が慣習になってきたのか?
それには、古来からの歴史的な経緯がある。



このように古代中国では、紙が発明される以前に木簡や竹簡に毛筆による縦書きで文字を書き残すようになり、
それが漢文の「右縦書き」の慣習になった。紙が発明されてからも、当初はそれを巻物状に使い、やはり「右縦書き」が続いてきた。
紙を紙片に分けて、それを冊子として閉じて使うようになっても、「右縦書き」が続けられてきた。
漢文をルーツにした和文も、左縦書きを慣習にしてきたが、日本では明治維新後に
欧文の影響を受けて、横書きも使われるようになったが、当初は右から左へ字送りする「右横書き」だった。
この「右横書き」では明らかに字の筆順とは逆向きに字送りされていた。
その後、和文でも欧文と同様に左から右に字送りする「左横書き」が使われるようになったが、
昭和初期までは、「右横書き」と「左横書き」が混在していたという。
今日では、かなり以前から「右横書き」は使われなくなっている。
しかし、縦書きに関しては、古来からずっと変わらず「右縦書き」の慣習だけが続いてきたのである。
今日においては、巻物に字を書くという特殊な状況でない限りは、「右縦書き」に固執する合理的な根拠はない。
縦書きと横履き(左横書き)や、欧文との整合性を持たせるために「左縦書き」の普及は、有効な方策と考えられる。
以上が、「和文左縦書き」の普及を推奨する理由である。

古井智(美術家 芸術学博士)

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